低帯域でも快適に使えるウェブアプリの作り方 コラム#129

コラムタイトル129

1. ネットワークが遅くても「待たせない」工夫

ウェブアプリは、高速なネット環境を前提に設計されがちですが、実際の利用環境は千差万別。地方のモバイル回線、地下鉄内、山間部など、通信が不安定だったり、帯域が限られる場面は意外と多いんです。だからこそ、低帯域環境でもストレスなく使えるように設計することが、いまのUXでは大切な視点だと思います。
たとえば、画像を最適化して必要最低限のサイズに抑えたり、WebP形式に変換することで通信量をぐっと減らすことができます。また、Lazy Loadを使えば、スクロールされるまでは画像を読み込まないようにできます。こういう小さな配慮の積み重ねが「重くない体験」につながります。

2. キャッシュとプリフェッチの賢い使い方

帯域に優しく、しかも高速に感じられる仕組みとして、ブラウザキャッシュとプリフェッチは有効です。特にPWA(Progressive Web App)の仕組みを取り入れると、Service Workerでオフライン対応もでるため、まるでネイティブアプリみたいに感じられることもあります。
リソースを事前に読み込む「プリフェッチ」や、リンク先のコンテンツを先読みする「プリロード」を適切に使うことで、実際の読み込みタイミングを短縮でき、ユーザーの操作に対してのレスポンスもスムーズになります。ここで大事なのは「なんでもかんでも先読みする」のではなくて、ユーザーの動きのパターンを予測して必要なものだけに絞ることです。

3. ユーザーに「待たせている感」を与えないUI

UXの観点で一番大事なのは、ユーザーに「待っている」と感じさせないことです。読み込み中のローディング画面を工夫したり、骨組みUI(スケルトンスクリーン)を使うことで、データが届くまでの「空白の時間」を埋めてあげることができます。
例えば、記事一覧を表示する際に、最初にタイトルやサムネイルの「枠」だけを表示して、読み込みが完了したら中身が埋まっていくような演出。これだけでも、体感速度は大きく変わります。人間は「待ってるかどうか」より「何かが進んでるかどうか」を重視するため、このような演出は意外と重要になってきます。

4. モバイルファーストで設計するという前提

実のところ低帯域環境のモバイルユーザーは想像しているより多いです。だからこそ、モバイルファーストで考えることは、結果的に低帯域対策にもつながります。画面サイズに応じて画像を切り替える「レスポンシブイメージ」や、使わないCSSやJavaScriptを極力削る「コード分割(Code Splitting)」も意識的に取り組むべき施策です。
また、ネットワークAPIのレスポンスを軽量化するのも大切です。GraphQLを使用したり、必要なデータだけを取得するようなAPI設計にしておけば、モバイルでもかなりの快適さを確保できると思います。

5. 「不便な環境」だからこそ、ユーザー思いの設計を

私自身、旅先や電波の弱い地域でアプリを使っていると、「なんでこのボタン押しても反応しないの?」「これ、読み込み中なの?バグ?」と感じた経験が何度もあります。そんなとき、「ユーザーに不安を与えないUIって本当に大事だな」と改めて考えさせられます。
通信状況に応じて「オフラインです」「ネットワークが不安定です」と表示するだけでも、ユーザーは「あ、そういうことね」と安心できると思います。低帯域でも快適なUXを届けるためには、こういう一言のメッセージすらも武器になり得ます。

低帯域対応は「制限」ではなくて「おもいやり」だと思います。限られた環境でもユーザーが快適に使えるように配慮することが、今の時代のウェブアプリに求められていることだと私は感じてます。ちょっとした工夫で、驚くほど使い勝手が良くなることもあります。だから、技術だけじゃなく「ユーザーの気持ち」に寄り添った設計、これからも大事にしていきたいです。

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