Webアプリのオフライン対応、キャッシュ制御の賢いやり方 コラム#152

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1. オフラインでも動くWebアプリって必要?

最近はWebアプリもモバイル前提で設計されることが増えました。そんな中、オフラインでも動作するWebアプリの需要は思った以上に高いです。特に営業先や移動中など、通信が不安定な場所でも使えると、ユーザー満足度が格段にアップします。
オフラインで動作するアプリケーションを作りにあたり「キャッシュ制御の設計がすべて」と言っても過言ではありません。

2. キャッシュ制御技術の基本:まずはService Workerから

オフライン対応の要と言えば、Service Worker。JavaScriptでバックグラウンドに常駐して、HTTPリクエストを横取りしてくれる存在です。キャッシュ戦略もこのスクリプトが中心になります。

例えば、以下のような戦略があります:

Cache First(まずキャッシュ):読み取り中心のアプリに向いてます。
Network First(まずネット):常に最新データを求められるアプリで効果的。
Stale While Revalidate(キャッシュ返してから裏で更新):表示速度と鮮度のバランス型。

おすすめは、読み込み速度重視の場面では「Stale While Revalidate」。体感速度が劇的に上がります。

3. IndexedDBとの合わせ技で最強に

Service Workerだけでも十分すごいですが、実はIndexedDBを組み合わせるともっと強力になります。
データ構造がしっかりしているアプリ(例:TODOリスト、顧客管理、商品カタログなど)では、キャッシュだけだと限界があります。IndexedDBならJSON形式で構造的に保存できるので、フォームデータやリストなど、通信不要で使えるようになります。
例えば、Flutter WebアプリとIndexedDBを組み合わせると、データ保存→再起動→復元がスムーズに実装できます。

4. キャッシュの落とし穴と向き合う

キャッシュは便利です。でも「古いデータがいつまでも残ってる」などの悩みも尽きません。キャッシュの更新タイミングを間違えると、古いHTMLやJSが表示されることもあります。
ここで検討したいのがキャッシュバージョン管理です。Service Workerのinstallactivateイベントをうまく使って、バージョン切り替え時に古いキャッシュを削除してあげることで改善します。

const CACHE_NAME = 'v2';
self.addEventListener('activate', event => {
  event.waitUntil(
    caches.keys().then(keys => {
      return Promise.all(
        keys.filter(key => key !== CACHE_NAME)
            .map(key => caches.delete(key))
      );
    })
  );
});

このような一手間を加えることでオフライン対応アプリの信頼性がぐんと上がります。

5. リアルな現場での課題と工夫

理想だけではなく現場のリアルもご紹介します。

バグの調査が難しい
オフライン状態だとエラー再現が難しく、検証用にChromeの「ネットワーク切断モード」が欠かせません。
複数デバイス間の同期問題
オフライン中に複数端末でデータ更新された場合はどうするか?「オンライン時にマージ処理する」方式が有効的です。
容量制限とパフォーマンス
キャッシュやIndexedDBに詰め込みすぎると、ブラウザが不安定になります。使用容量のモニタリングは意外と盲点になりやすいので要注意です。

オフライン対応は正直なところ面倒くさい側面も多いです。ですが、これがあるだけでユーザーの体験価値は一気に上がります。そして、キャッシュ制御技術は、それを支えるとても大事な技術のひとつです。Service Workerを軸に、IndexedDBやバージョン管理を駆使すれば、ネットワークに依存しない、しなやかなWebアプリが実装できます。

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